近藤せいけんによるかっぱのお話。
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***かっぱのお話***
①相模川の河童 中津川の鮎姫
②太郎河童の夢 小鮎川のかっぱと白龍
③相模のかっぱ漬け
④河童のお使い ***かっぱの詩***
⑤相模の河童さくらの宴へ かっぱ音頭
⑥相模の河童まつり かっぱサンバ
⑦相模の河童まつり宴たけなわ
⑧相模の河童村 三流
⑨河童の名工 甚五郎
⑩名工甚五郎とかっぱ堂
⑪太郎河童と小童
⑫かっぱ村三流のお土産
⑬厚木宿のかっぱ屋
⑭かっぱのなみだ 1

中津川の鮎姫

相模の国に中津川とよばれるきれいな水の流れる川があります。水がとても澄み、鮎が沢山住んでいる、美しい川です。
ある日、釣り人が釣り糸を流していると突然引きがあり、針がお腹にかかり、形がよい美しい鮎があがりました。

釣り人「何と美しい鮎だこと。いままで見たこともない形だこと。今日はあまり釣れないので、もう上がろうか。この形の良い 美しい鮎は逃がしてやろうかぁ」

釣り人は、釣り上げた美しい鮎をそっと川にいれ、逃がしてあげました。鮎は静かに沈むと川の本流に帰っていきました。

釣り人「 さぁ~帰ろう。」

といつもの道を歩いて帰りました。
すると中津川をわたる橋に、一人の美しい若い女の人が、立っていました。釣り人はびっくりして立ち止まりました。

釣り人 「あんりゃ?あんたは誰じゃ、なんでそこに立っているんじゃ?何をしているんじゃ?」

若い女 「わたしはさきほど逃がしていただいた、鮎です。」

釣り人 「ぶったまげた、本当にそうか、あの鮎か。それでこのわしになんぞ用か?」

若い女 「お頼みしたい事があります。」

釣り人 「このわしに何をしろというのか。」

若い女 「このさきの下ったところに、もぐり橋があります。そこに悪さをする河童がすんでいます。その河童を退治してほしいのです」

釣り人 「河童を退治してくれとなぁ!」
 
若い女 「退治といっても、もぐり橋から他の場所に、移してほしいのです。」

釣り人 「その河童は何をしたんじゃ?」

若い女 「わたしたち鮎族は、春先に、海からそ上して、生まれ故郷に帰ってきます。いつの頃からか、もぐり橋にやっとの思いで到着しますと、河童が現れ通行料を取るようになりました。」

釣り人 「河童が通行料となぁ、ワハハハ。何を払えと言っているのか。」

若い女 「海の真珠です!」

釣り人 「海の真珠だと!」

若い女 「最初の頃は、河童の要求もそれほどでもなく、いたしかたなく払っていましたが、年を追うごとに増え、100匹に対して1個となり、いまでは三匹で1個となってしまいました。」

釣り人 「いたずら河童は真珠をそんなに沢山とって、なにに使うのじゃろう?」

若い女 「何にも使いません、ただ自分が川で一番エライと言うことを見せたいだけです。」

釣り人 「なんで、いたずら河童は、三匹で真珠1個なんじゃろう。」

若い女 「なんでも、人間との約束ごとだとのたまっています。訳がわからないのです。」
  
釣り人 「いたずら河童の、好きなものはなんじゃろう。」

若い女 「それはダイコンです!」

釣り人 「ダイコンじゃと?そうかぁ。えらいものが好きじゃのう。さぁて・・・どうしたら・・・」

若い女 「もぐり橋から、ずうっと上にあがって行きますと、大きな大ぜきがあります。そこから、もっと上に湖があります。その両岸は土もこえ、野菜作り、とりわけ、ダイコン作りはちょうど良い土地です。」

釣り人 「そこへ連れていけとな?」

釣り人はじっとして考えた・・・どうしようか、この女の話をきいてやり、いたずら河童を連れていくか、それとも止めようか。
すると、若い女がさらに言う。

若い女「もしいたずら河童を連れていってくれましたら、御礼に河童がこれまで、わたしども鮎から集めた真珠を、ある場所から持ってきましょう。」

釣り人「真珠をくれるのか!」

若い女 「はい、全て差し上げます。」

釣り人 「河童の真珠をか?」

若い女 「はい。わたし共が通行料として払った真珠です。」

釣り人 「河童が怒らないか。」

若い女 「いいえ、怒りません。河童はおもしろがってやっているだけで、川のあるところの、水底の大きな穴に放りなげています。いたずら河童は、最近は人間からダイコンが手にはいらないので、イライラしています。必ずこの話にはのってきます!ぜひやって下さい。」

釣り人 「そんなものかえ。」

若い女 「それに河童の弱点をお教えいたします。」

釣り人 「いたずら河童に弱点が、あるかえ。」

若い女 「河童は大堰を登れません。」

釣り人 「上り下りができないのか?」

若い女 「平らのところはトコトコ歩けますが少し高くなると、上れません。この先の大ぜきを越えれば、もう、こちらに帰れません。」

釣り人 「そうかのう・・・」

若い女 「いたずら河童は、このところ毎日夕暮れ時に、もぐり橋の上で村人を待ち伏せして、ダイコンを取ろうとしています。でも、村人も警戒して、もぐり橋をさけて、違う橋を使い、行き来しています。」

釣り人 「河童の真珠は、沢山あるのかえ?」

若い女 「ここ何十年も、わたしども鮎から集めた真珠は、大きな川底の洞穴にぎっしり詰まっています。その洞窟がいくつもあります。鮎の真珠は大変良いもので、宝物になるでしょう。」

釣り人 「ほ~う、そうか。それじゃ、やってみんべえか。」

若い女 「ありがとうございます!きっと、きっと、お願いします。」

釣り人は村に帰った。そして一晩まんじりとしないで、あれこれと考えた。そして翌日畑に行き、ダイコンを何十本と抜き、肩のかごに入れ大ぜきについた。

釣り人 「ようし、せきの上に下から、見えるように並べよう。」

釣り人は、せきの下から見えるようにダイコンを並べおえると、夕暮れを待った。
夕暮れどき、いよいよもぐり橋のいたずら河童に、会いに行った。
もぐり橋に着いた。いつものように、橋の途中にいたずら河童が陣取って、村人が通るのを待ち構えていた。

釣り人 「これ、これ、河童、名のない河童、そこで何をしている?」

河童 「この俺様のことか!」

釣り人 「そうだ!お前のことだ。」

河童 「ちゃんとした~名があるぞ!」

釣り人 「へえ、何と言う名だ。」

河童 「俺様の名は、太郎河童ともうす!」

釣り人 「たいそう、いい名だ!御見それしました。」

太郎河童 「えへん、そうか、よろしい。ところで、おまえは何を持っている?」

釣り人 「ダイコンを一本持っている」

太郎河童 「やや、なんと、ダイコンとな。よろしい、こちらに投げてよこせ!」

釣り人 「ほら、投げるぞ!えいっ」

太郎河童 「よしっ、ガリガリ、ガリガリ。うまい、うまい、久しぶりの、ダイコン!ガリガリ、ガリガリ。うまかった!もっとないか」

釣り人 「この先の大ぜきに、沢山あるぞ!」

太郎河童 「本当か!ようしようし、いますぐいくぞ!」

太郎河童、釣り人が大ぜきに急ぐ。

太郎河童 「ありゃりゃ?なんだなんだ、こりゃ」

釣り人 「大ぜきの上に、あるじゃないか!」

太郎河童「大ぜきは、おれは上れない!」

釣り人 「それじゃ、おれがおぶっていくのは、どうじゃ?上には沢山のダイコンや、青物があるぞ!」

太郎河童 「この俺様が出来ない事はないが、俺様も少々、年をとった。この大ぜきを登るのはしんどくなった・・・」

釣り人 「この上にはおぬしがこれまで経験したこともない楽しい世界があるぞ!おぬしの大好きなダイコンや青ものが沢山とれるぞ!」

太郎河童 「・・・・・・・・・」

釣り人 「どうじゃ、勇気をだして踏み出さんか。」

太郎河童 「おぬしはそんなに、なぜすすめるのか。おぬしはそれで、なんか得をするのか?」

釣り人 「ただの、おせっかいだよ。おぬしがわしを疑うのならば、この場を去る。いいか?」

太郎河童 「まあまてまて、そう怒るな。おちつけ。おれも、この狭い場所に厭いていた。大ぜきの上にいってみたいと夢みたことも、度々あった。ここは、流れも速いし水の量も少ない。それに好物のダイコン、村人は運んでこなくなった。」

釣り人 「どうだ、ここらがしおどきだ、決めろ!おれがおぬし上に運び、そしておぬしの大好きなダイコン、青物をつくってやる。」

太郎河童 「いつも、ダイコンや青物がたべられるのじゃな・・・」

釣り人 「うん、そうじゃ。」

太郎河童 「よし! 決めた!上にあがろう。おぬし必ず、約束をまもれよ。」

釣り人 「さあ、俺の肩にのれ、いくぞ!」

釣り人の肩に乗り、太郎河童は、住みなれた下の流れから、上のまだ見ぬ世界へと、ところを変えた。

太郎河童 「わあぁ、こうなっていたのか!随分と深そうだなぁ。流れが穏やかで、住みやすそうじゃ。それに色んな魚がいそうじゃ。」

釣り人 「お前の好きなダイコン、青物はおれが作り、いつでも食べられるようにするからなぁ。」

太郎河童 「頼むぞ!約束を守れよ!さて、もっと上の湖とやらをのぞいてこよう。じゃ、またなぁ~」

釣り人 「気をつけて、いけよう。」

釣り人は鮎姫と出会った、いつもの釣り場へ急いだ。そして鮎姫をよんだ。すると、音も無く鮎姫が現れた。

釣り人  約束ははたした!太郎河童を大ぜきの上に移した。」

鮎姫 「存じています、本当によくやってくれました。御礼もうしあげます。これで安心して、海から上がってこれます。さあ、これをお受け取り下さい。」

鮎姫は真珠の入った大きな袋を侍女にもたせ、次々と釣り人の前においた。沢山の大きな袋が並べられた。
 
釣り人 「わしは、太郎河童との約束をはたすため、大ぜきの上の両岸の土地を買い、ダイコンや青物を植える。土地とダイコン、青物のたねを買える、量の真珠があればいい。この小さい袋が一つあれば、足りる。あとは、元に戻しておいてやってくれ。」

釣り人は小さい袋を一つ、受け取ると、帰ろうとした。その時、鮎姫が声をかけた。

鮎姫 「名がないと、言いましたね、お名をつけませんか。」

釣り人は暫く考えた。

釣り人 「そうだな、太郎河童もかわいそうなやつ。これからも、つき合ってやらねば・・・そうだ!鮎姫の鮎、太郎河童の太郎から取って、鮎太郎!どうじゃ?」

鮎姫 「いいお名でございます。鮎太郎様!」

釣り人 「そうかぁ、鮎太郎!わはは」

鮎姫 「それでは鮎太郎様、御礼と、お祝いに一さし、舞ましょう」

鮎姫の舞は、それはそれは美しい、心にしみわたる舞であったそうな。

いまでも相模川の三流合流地点のどこか、川底の洞穴には、太郎河童が隠した、真珠が眠っていると伝えられている。
そして、鮎姫の舞は地元の人の心の中に伝えられている。


(終わり)


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小鮎川のかっぱと白龍


相模の国の飯山というところに、小鮎川という、とてもきれいな水がながれる川があり、そこにはかっぱの親子がすんでいました。
小鮎川とよばれているように、沢山の鮎がとれる、豊かな清流です。
かっぱの親子は父親の次郎かっぱ、母親のさち、息子の龍、娘のあい、の四かっぱで仲良く、生き生きと暮らしていました。
その年は春から雨が降らず、小鮎川の豊かな水も、日一にち、流れが細り、鮎やうぐい、はやも上がってこず、食べ物が少なくなってきました。
この飯山村の付近の百姓衆も、困っていました。
五月の田植えの季節になっても、一滴の雨も降らず、田畑はカラカラに乾いて、草一本、生えない、日照りが続きました。
次郎かっぱの親子は、川の水がないと、生きていけません。
さち「 このまま、雨が降らないと、食べものがなくなって、生きてゆけない」
次郎「 そうだな、こんなひどい、長い、日照りは初めてだな」
あい「 お腹がすいた、鮎が食べたい」
龍「 あい、もう少しがまんしろ」
あい「でも、にいちゃん、お腹すいたよ」
次郎「ああ~なんとかしないと」
さち「そう言ってもね~どっこいしょ」
「それじゃ、畑に行って、枯れかけた、ダイコンを取ってくる。
あい、お前も行くか」
あい「ううん、いいよ、いかない。腹すくもの」
そこえ、飯山村の庄屋 吾助が村の衆とやって来た。
すぐさま、口を開いた。
「かっぱの次郎どん、頼みがあってやって来た」
「 今年は春から、一滴の雨も降らず、田畑はカラカラに乾いて、草一本生えない」
「 五月だというのに、田植えが出来ない、このままでは飢え死にしてしまう」
「 畑の青物も枯れてしまい、食べるものが、もう少しで無くなる」
「次郎どん、何とか,おぬしの力で、雨を降らしてくれぬか」
村の衆「このままでは、この地方は全滅してしまう。どうかどうか、力をかして下され」
次郎かっぱは腕組みして、村の衆の話をじっと聞いていた。
おもむろに次郎かっぱが口を開いた。
「 この俺には、雨を降らす、力は無い」
「 小鮎川の流れも細り、この俺も困っている」
「食べる物も少なくなり、日一日、悪くなっている」
その話を聞いていた、村の衆はがっかりして、その場にへたりこんだ。
吾助「 次郎かっぱでも、だめか・・・」
しん~と沈黙が流れた。
すると、次郎かっぱが口を開いた。
「一つだけ、望みがある」
「えlぇ~本当か」
「どんな、望みじゃ、早く教えて下され」
「それは、飯山観音さまの裏、白山山頂にある白山池に住む白龍様に頼む方法じや」
「え、え~、白龍さまかよ」
「でも、どうやって、頼むのじゃ」
「それは、この次郎かっぱに、任せてくれ」
「そんなこと、本当にできるのか?」
「そう、俺には出来る」
「さぁ~これから、呼びかけるから、下がってくれ」
次郎かっぱが頭の皿に手をやり、手を何回も回し、白山池に向かって、手を広げ、気合を入れた。
「えぃ~ 白龍さま、白龍さま、おでまし下され」
「白龍さま、白龍さま、この次郎かっぱの願い聞き届けくだされ」
村人は皆、正座をして、飯山観音さまの方角を見つめ、手を合わせた。
すると、だんだん風が強くなり、ごうごうとういう音が大きくなり、風とともに、青空に白い大きな、物が近づいて来た。
白龍であった。
天空に止まり、その鋭い目で、次郎かっぱを見つめた。
「次郎かっぱ、わしを呼んだか」
「何ようで、あるか」
「白龍さま、ご覧のように、地上は長い日照りで、カラカラに乾き、草木も枯れようとしています」
「どうか、白龍さまのお力で、雨を降らして下され」
「小鮎川も、荻野川、相模川も流れが細り、百姓衆も田畑の作物が出来ず。そのうえ、田植えの時期に田に水が引けず、困りはてています」
「わたしの住む、小鮎川も流れが細り、食べ物の魚が上がってこず、困っています」
「どうか、白龍さまのお力で、雨を、雨を降らせて下さい」
白龍は天空にとどまり、じっと、次郎かっぱの話を聞いていた。
「よかろう、次郎かっぱ。おぬしの願い聞き届けてもよいが、しかし・・」
「はぁ~、何なりとお申しつけ、下さい」
「 よし、それでは、申しつけよう」
「わしは、玉(ぎょく)を求めている」
「わしにふさわしい、輝きの玉を」
「え、玉(ぎょく)ですか・・」
「出来るか、次郎かっぱ」
少し、間を空いて。
「はい、必ず輝きの玉を、お作りいたします」
「そうか、それは、上々、楽しみじゃ」
「待っているぞ、次郎かっぱ。さらばじゃ」
「皆の衆、聞いてのとおりじゃ、力を合わせて、「輝きの玉」を作ろう。」
吾助「 でも、どうやって、作るのじゃ」
「 この、おれに従ってくれ」
「それは、よいが・・」
「よいか、皆の衆、あそこに見える、丹沢の山奥に水晶が沢山、眠っている山がある。そこから、大きな、上等な石を探して、ここに運んできてくれ」
「あとは、この俺に任してくれ」
吾助「そうか、それでは、皆の衆、水晶山へ出かけ、よい石を運んでこよう」
「まかしたぞ」
「急いで、仕度をしろ」
「ただちに、出かけるぞ」
飯山村の村人は荷車を引き、水晶山に出かけた。
翌日の夕暮れ時に荷車を引いた、村人が戻ってきた。
おおきな、水晶の原石を積んで、次郎かっぱの前に持ってきた。それはそれは、立派な水晶石であった。
「さあ、その水晶石を河原において下され」
「皆の衆は、土手の上まで、下がって」
次郎かっぱと、さちかっぱは、大きな水晶石をはさんで立ち、両手平を水晶石に向けた。
「水晶石よ浮かび上がれ!浮上せよ!」
すると、大きな、重い水晶石が少しづつ、浮かびあがり、頭上でピタリと止まった。
「 水晶石よ、回れ、回れ。丸く、丸くなれ!」
「早く、早く、回れ、丸く、丸くなれ」
水晶石が回り始めた。だんだん早くなり、白い輝きを発し、ますます、早く回転続けた。
土手の上の村衆は正座して、両手を合わせ、祈った。
一昼夜、次郎かっぱ、さちかっぱは一心不乱(いっしんふらん)に念力を発し続けた。
「出来た! 出来た!」
水晶石の回転が少しづつゆるやかになり、止まった。
吾助「何と!神々しい、輝く玉(ぎょく)であることか」
次郎かっぱ、さちかっぱが、手の平をゆっくり降ろした。
輝く玉(ぎょく)がゆっくり降りて、河原に着地した。
村の衆が降りてきて、輝く玉(ぎょく)に手を合わせた。
「さあ、出来た、出来たぞ。こん身の玉(ぎょく)ぞ」
「それでは、白龍様をお呼びいたすぞ」
次郎かっぱが手の平を飯山観音様に向けた。
「白龍様、白龍様、輝く玉(ぎょく)が出来ました。どうぞおいで下さいませ」
すると、だんだん風が強くなり、ごうごうとういう音が大きくなり、風とともに、青空に白い大きな白龍様が近づいて来た。
天空に止まった。
『次郎かっぱ、出来たか』
「 どれ、見せてみろ」
すると、「輝く玉(ぎょく)」は音も無く、天空に上り、白龍様がじっと、見つめた。
「う、う~う、すばらしい!」
「実に、すばらしい、わしが願っていたとおりの、玉(ぎょく)じや」
「うは、はは、は、よくやった、皆の者」
「次郎かっぱ、村の衆、おぬし達の願いききとどけようぞ」
白龍様は輝く玉(ぎょく)を口にくわえると、天高く飛び、
天龍となった。
すると、まもなく、大きな雨雲が次々とあらわれ、大粒の雨が降り始めた。
雨は三日三晩降り注ぎ、小鮎川。荻野川、中津川、相模川、付近の川、池を満たし、元の豊かな流れとなった。
田畑は元の緑をとり戻し、豊かな田園となった。
それからのちも、相模の国は日照りもなく、緑の平野となった。
次郎かっぱ、さちかっぱ、龍、あいかっぱの、親子のかっぱは、いつまでも村人から慕われ、仲良く暮らしました。
白龍様は相模の国の伝説となり、子々孫々まで、語り継がれ、
いまでも、「白龍の舞い」として、受け継がれている。



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相模川の河童

昔々、相模川に河童がすんでいました。相模川にかかる橋にもぐり橋と、地元の人からよばれた橋がありました。相模川が増水すると、橋が川の中に沈み、普段は人々が行き来する生活橋でした。ある日のこと、一人の村人が野良仕事を終え、川向かいの畑から、もぐり橋を渡って帰ってきた。橋の途中までくると、誰かが橋の真ん中に座っていた。村人は声をかけた。

村人 「もしもし、そこで何をしているのじゃ。通るのにじゃまじゃ、どいてくれ!」

すると、座っていた者が立ち上がった。背丈は普通の大人なみだが、痩せている。頭に皿のような物を載せ、口はとがって、手は異常に長い。目は細長く、変わった形の身体をしていた。

村人 「お前は、どこの者か?厚木村の者か?見た事もないやつだな。なぜ黙っているのか、早くどいてくれ。」

立ち上がった者は無言で村人を見つめていたが、おもむろに、口を開いた。

河童「おれは、相模の川にすむ 河童。名はないが、つけるとすれば太郎。」

村人 「それじゃ、太郎河童、何の用だ!」

河童 「一人では、寂しいから、話 相手がほしい」

村人 「もう夕暮れが、せまっている、おまえの話し相手をしている時間はない。」

河童 「それじゃ背なかの籠の白いダイコンと、青物を少し置いていけ。このところしばらくダイコンを食べていない、置いていけ!」

村人 「それは出来ない。せっかく大事に育てたダイコンだ、置いてはいけない」

河童 「そうか、それじゃあ鮎と交換しようか。」

村人 「鮎か、鮎と交換ならいい。」

河童 「決まった!鮎一匹と、ダイコン一本でどうじゃ。」

村人 「 それじゃダイコンがかわいそうだ。ダイコン一本と鮎五匹でどうじゃ。」

河童 「それじゃ鮎がかわいそうじゃ。じゃあまけて、鮎ニ匹とダイコン一本でどうじゃ。」

村人 「ダイコンは重い、鮎は軽い。不公平じゃないか」

河童「何か変じゃが仕方ない。鮎三匹とダイコン一本でどうじゃ、これ以上はだめじゃ!」

村人と河童の取り決めは後の世に残り、今でももぐり橋をわたる人は、ダイコンを持って渡っているという。

(終わり)



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太郎河童の夢

相模の国を流れる、大河相模川。そこに住む太郎河童。一ぴきで気楽であるが、近頃、少し退屈で寂しい。何故か空しい、誰でもいいから仲間が欲しい。
今日も相模川の中程の大堰(おおぜき)の上でだいすきなダイコンをかじりながら、晴れわたった空をぼんやりながめ、「フウ~」と孤独な、ため息。
「一ぴきでは、寂しいなぁ~アァ仲間がほしい」
「人間をからかうのも、もうあいた。」
「おれはこれからどうなるのか、話し相手が欲しい」
「昔はよかった。数匹の仲間がいて毎日楽しく暮らしていた。あの頃がなつかしいなぁ」
太郎河童の仲間は、かなり昔、新天地を求めて一ぴき
また一ぴき去っていった。命がけの旅にででいった。河童は真水の川では自由自在(じゆうじざい)であるが、海水では長い時間泳ぐことはできない。また歩くことは住みかの周囲しかできない。
「アァ~仲間が欲しい!誰かこの川にこないかなぁ?しかし来るはずはないよなぁ」
太郎河童はいつまでも、ダイコン畑に横に鳴り、遠く高くなった秋空を眺めていた。その時一羽の大ワシが上空を悠然と飛び、大きな輪を描き、だんだん高く遠く、小さくなっていった。
「おれもワシのように自由にどこへでも飛んでいけたらなぁ」
太郎河童は寝がえりをうち、自然と涙があふれてきた。
「俺って、孤独だなぁ」
「人みたいに、旅ができたらなぁ」
「河童の仲間探しにいくのになぁ」
「一ぴきじゃ、生きてゆくのが、つらい」
まだ涙が止まらず、そのまま眠りにおちていった。秋空の中、霊峰「大山」がどっしりと静かにそびえていた。
太郎河童は夢をみた。
多くの仲間が相模川に集まり、楽しくおどり、また食べゆかいに笑いあっている。
ある河童はかっぱおどりをし、またあるかっぱは橋の上から思い切り飛び込み大きな水響きをあげ、またあるかっぱは水の中の鮎や、うぐい、こいをおっかけまわし、たまに首をだして、かっぱの得意のなきごえをする。取っ組み合いの相撲をとるかっぱ達、中州に生えた木から対岸につるの縄を張り、つるの上を歩くかっぱ。それはそれは楽しいお祭りさわぎ。
いつも輪の中に自分がいた。いつも見る夢であった。
一じんの冷たい風が吹き、太郎河童は眠りから目をさめた。
「また夢か。寂しいなぁ」
「あぁ、退屈で死にそう」
「何かよい方法はないかなぁ」
太郎河童はぼんやりと大山をながめていた。
「そうだ!大山の天狗様にお願いしよう」
「天狗様であれば、願いをかなえてくれるだろう」
「でも、どうすれば、よいのやら?」
太郎河童は座りなおし、霊峰大山にむかい祈った。
「どうかどうか、天狗様のお力で、河童の仲間をよびよせてくださいませ。」
「どうかどうか、お力お貸しくださいませ」
いつまでも、いつまでも、祈りつづけた。
沈みゆく夕日のなか、一筋の黄金のひかりが放たれた。
しかし、夢中で祈りつづける、太郎河童の目には映らなかった。


(終わり)




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相模のかっぱ漬け
相模の国の大河相模川のながれる三田村に近くの河原に「太郎河童」という一ぴきの河童が住んでいました。
たった一ぴきで仲間がいません。
「あぁ~、一ぴきは寂しいなぁ」
「仲間が欲しい、誰かこないかなぁ」
「一ぴきじゃ、寂しくて生きていけない」
「あぁ、仲間がほしいなぁ」
大堰(おおぜき)の上のいつものダイコン畑にながながと横になり、じっと秋の空をぼんやりながめていまいした。
そうして悠悠とそびえる、霊峰大山を見るともなしにぼんやり見ていました。
「そうだ!大山の天狗様のお願いしよう」
「大山の天狗様であれば願いをかなえてくれる」
「きっとかなえくれる」
太郎河童は中州に座り直し、霊峰大山に向かい手を合わせ真剣に祈りつづけました。
しばらくすると、沈みゆく夕日の中一筋の黄金の光が座りつづける中州の太郎河童に向かって、さしこんできました。
太郎河童は目を閉じて熱心に祈りつづけているため、気づきません。
太郎河童のまわりが急に黄金に輝き始め、明るく、まぶしく輝き始めました。
それでも太郎河童は気づきません。すると突然大きな割れんばかりの声がしました。
「太郎河童!これ太郎河童、目をあけよ!」
大きな声に驚いて、太郎河童が、おそるおそる、目を開けました。
「わぁ~まぶしい!まぶしすぎて何も見えない」
「目がパチパチして何も見えない」
「太郎河童。上を見よ!」
「え、上ですか?」
声をするほうを見た。黄金に輝く光が引いていき、そこには大きな赤色の形をした物が見えた。
「太郎河童、おぬしがわしを呼んだ。」
「もしや、大山の天狗様でございますか」
「そうじゃ、わしが大山の天狗じゃ」
「ははぁ~。おそれいります」
「さて、わしに何ようか?」
「話をしてみよ」
太郎河童はこれまでのいきさつを話し、一ぴきがどんなに寂しいか、悲しいか、不安か話した。天狗様は上空にとどまり、じっと、河童の話を聞いていた。
「それで、おぬしは河童仲間をよびたいとなぁ、ん・・・ん」
「そうか、その願い、聞きとどけよう」
「それで、河童仲間は日本のどこにおるのじゃ?」
「はい、私ども河童は河童語と、独自の通信があります」
「よんでいただきたいのは、数十箇所がざいます」
「そんなにいるのか?」
「もう少し、しぼれないか」
「はぁ~そうですか。それだは数箇所にしぼります」
「それでは御言葉にあまえまして、まず遠野のかっぱ、五島列島の(ガータロー)、島根の日野川のかっぱ、筑前若松のかっぱ、をお願いいたします。」
「さようか。よし!あい解った。」
「おぬしの檄文はどうする?」
「ひょうたんに、わしのかっぱ語を入れ届けてくだされ」
「ひょうたんにかっぱ語をいれるとなぁ。わはは、わはは!ゆかい、ゆかい」
天狗様が高らかに笑いました。
「天狗様がおいきになるのですか?」
「わしはいかぬ」
「えっ、どなたがいかれますか?」
「太郎河童、後ろをみよ!」
「え、なんですか?」
中州に生えている木の上に一羽の大きなワシが音も無く止まっていた。
「わしの使いじゃ」
「は、は、は ワシ殿が運んでくれるのですか」
「ぜひ、お願いいたしますじゃ」
天狗様は「じろり」と太郎河童をにらんだ。
「ところで、太郎河童、おぬしはわしに何をしてくれるのか」
「え、え?何といわれましても。どうしようか・・・何もないし・・・」
「そうだ!天狗様、わしが漬けた旬の野菜があります、それを召し上がってくだされ」
「旬の野菜の漬物とな」
「どれ、出してみろ」
「今に時期は白菜の漬物が、一番おいしゅうございます。」
天狗様は白菜づけを、「ぱりぱちり」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、なすづけでございます。」
天狗様は茄子づけを「ぎゅぎゅ」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、胡瓜づけでございます。」
天狗様は胡瓜づけを「きゅ、きゅ」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、かぶづけでございます。」
天狗様はかぶづけを「かぶ、かぶ」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは瓜づけでございます。」
天狗様は瓜を「うり、うり」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
天狗様はらっきょを「らっきょ、らっきょ」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、だいこんでございます。」
天狗様はだいこんを「でいこん、でいこん」と食べた。

すこし、間をおいて、天狗様が大きな声で。
「太郎河童、美味であった。美味、美味」
「おぬしの願い聞きとどける!」
「これがのち、人と和し、この相模に住まう人達にこの漬物を広めよ!」
「相模のかっぱ漬けと名づけ、長く、後世に伝えよ、さらばじゃ」
大山の天狗様はけむりと共に消えた。そこには、天狗様のお使いワシと相模の河童太郎が、暮れ行く秋風の中にいた。


(終わり)




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河童のお使い

相模の国に相模川にすむ、太郎河童はいつも一ぴき、孤独で寂しい日々を送っていた。
「あぁ~誰か、仲間がこないかなぁ」
「一ぴきじゃ、寂しくて気がおかしくなりそう」
「話あいてが欲しい、あそび仲間がほしい~」
「一ぴきじゃ、生きていけない」
そこで、太郎河童は「大山の天狗様」にお願いすることを思いついた。
「大山の天狗様、どうか、どうか、河童仲間をよびよせてください」
太郎河童は熱心にいつまでも祈りつづけた。すると霊峰大山から一筋の黄金の光が輝き、太郎河童を包んだ。
太郎はまぶしくて目をあけていられなかった。大きな声が頭上に響いた。
「太郎河童、おぬし、わしを呼んだか!」
「もしや、大山の天狗様でございますか」
「そうじゃ、わしが大山の天狗じゃ」
「ははぁ~。おそれいります」
「さ~て、わしに何ようか?」
「話してみよ」
太郎河童はこれまでのいきさつを話し、一ぴきがどんなに寂しいか、悲しいか、不安か話した。天狗様は上空にとどまり、じっと、河童の話を聞いていた。
「それで、おぬしは河童仲間をよびたいとなぁ、ん・・・ん」
「そうか、その願い,聞きとどけよう」
「それで、河童仲間は日本のどこにおるのじゃ?」
「はい、私ども河童は河童語と、独自の通信があります」
「よんでいただきたいのは、数十箇所ございます」
「そんなにいるのか?」
「もう少し、しぼれないか」
「はぁ~そうですか。それでは数箇所にしぼります」
「それでは御言葉にあまえまして、まず遠野のかっぱ、五島列島の(ガータロー)、島根の日野川のかっぱ、筑前若松のかっぱ、をお願いいたします。」
「さようか。よし!あい解った。」
「おぬしの檄文はどうする?」
「ひょうたんに、わしのかっぱ語を入れ届けてくだされ」
「ひょうたんにかっぱ語をいれるとなぁ。わはは、わはは!ゆかい、ゆかい」
天狗様が高らかに笑いました。
「天狗様がおいきになるのですか?」
「わしはいかぬ」
「えっ、どなたがいかれますか?」
「太郎河童、後ろをみよ!」
「え、なんですか?」
中州に生えている木の上に一羽の大きなワシが音も無く止まっていた。
「わしの使いじゃ」
「は、は、は ワシ殿が運んでくれるのですか」
「ぜひ、お願いいたしますじゃ」

太郎河童のかっぱ語を入れた、ひょうたんが各地の河童に運ばれた。
太郎河童のゲキはこう吹き込まれていた。「我々、河童族は子々孫々に渡るまで生き残り,繁栄しなければならない。人間界と和し共に共栄共存をしなければならない。河童族の団結をはかり、交流をはかり、子々孫々に渡るまで繁栄をしなければならない」
「相模のかっぱ祭りを楽しもうぞ!」
「賛同されるかっぱ族は、春はさくらの咲く頃、相模の国、相模川にご参集くだされたい。相模の国 相模川の河童 太郎」
大山の天狗様のお使いワシは各地の河童族にひょうたんのゲキのかっぱ語とある物をおいていった。
ワシがササの葉をくわえ、吹きあげると、みるみる「和船」に変わり、河童族の足として使える船が何そうもできた。
河童族は大変喜んだ。
「この船があれば、遠い相模の国まで寝ていてもいける」
「ようし!春はさくらの咲く頃、一族で相模の国へいくぞ!」
「相模の太郎河童に会うのが楽しみだ」
「大山の天狗様のお使いワシ殿、たしかにうけたまわった」
「この返事をひょうたんに吹き込みますので、お持ち帰りいただきたい」
ワシ「承知した」
大山の天狗様のお使いワシは各地のかっぱ族の返事をもって、太郎河童にとどけた。
「ありがたい!お使いワシ殿、ありがたい、ありがたい」
ところで、太郎河童
「ワシにも、天狗様が召し上がった、相模のかっぱ漬けをだしてくれ」
「はい、おやすい御用、しばらくお待ちあれ」
最初は旬の野菜、白菜漬けを出した。
「今に時期は白菜の漬物が、一番おいしゅうございます。」
ワシ殿は白菜づけを、「ぱりぱり」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、なすづけでございます。」
ワシ殿は茄子づけを「とんとん」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、胡瓜づけでございます。」
ワシ殿は胡瓜づけを「きゅ、きゅ」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、かぶづけでございます。」
ワシ殿はかぶづけを「ぶか、ぶか」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは瓜づけでございます。」
ワシ殿は瓜を「りう、りう」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
ワシ殿はらっきょを「らく、らく」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、だいこんでございます。」
ワシ殿はだいこんを「こんだい、こんだい」と食べた。
すこし、間をおいて、ワシ殿が大きな声で。
「太郎河童、美味であった。美味、美味」
「ごちそうになった。さくらの花の咲く頃,おおぜいのかっぱが訪れるであろう。」
「太郎河童、おぬしの願いがかなった、よかったな。楽しめ」
「太郎河童、おぬしにも、どこでもいける和船(かっぱ船)をしんぜょう」
ワシはささの葉をでだすと、「ふ~ふ~」と息をを吹きかけた。
すると大きな和船が、ぱぁっとあらわれた。
「このかっぱ船はおぬしのにがてな、大ぜきもらくらくのりきる海にもいかれるぞ」
「わぁ~本当か、すごい!」
ワシ殿は「ギャア~」と一声なくと羽を広げた。
「いざ、さらばじゃ~」
ワシ殿は霊峰大山に向かって飛びたった。



(終わり)




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相模の河童さくらの宴へ

相模の国に相模川にすむ、太郎河童はいつも一ぴき、孤独で寂しい日々を送っていた。
「あぁ~誰か、仲間がこないかなぁ」
「一ぴきじゃ、寂しくて気がおかしくなりそう」
「話あいてが欲しい、あそび仲間がほしい~」
「一ぴきじゃ、生きていけない」
そこで、太郎河童は「大山の天狗様」にお願いすることを思いついた。
そして、願いがかなって、大山の天狗様のお使いワシ殿が、日本各地の河童族に、かっぱ語が入れたひょうたんを届けた。そして、天狗様のお使いのワシ殿は、相模の国の相模川へたどりつく乗り物として、ササで和船を作った。
河童族の足として使える船が何そうもできた。
河童族は大変喜んだ。
「この船があれば、遠い相模の国まで寝ていてもいける」
「ようし!春はさくらの咲く頃一族で相模の国へいくぞ!」
「相模の太郎河童に会うのが楽しみだ」
「大山の天狗様のお使いワシ殿、たしかにうけたまわった」
「この返事をひょうたんに吹き込みますので、お持ち帰りいただきたい」
ワシ「承知した」
大山の天狗様のお使いワシは各地のかっぱ族の返事をもって、太郎河童にとどけた。
「ありがたい!お使いワシ殿、ありがたい、ありがたい」
太郎河童は喜んだ。
やがて冬がゆき、暖かな春が相模の国におとずれた。
いよいよ、太郎河童がまちにまった、各地の河童族がやって来る,さくらの宴(うたげ)の頃となった。
さくらの花がつき始めた。
太郎河童はここ数日、相模川の河口の平塚まで遠征(えんせい)して、いまかいまかと待ち続けた。
夕映えが海側からせまってきた。
「今日も見えぬか・・・」
「いたしかたない、もどるか」
その時である、数そうの和船が点に見えた。だんだん河口にせまってくる。
「太郎どん、太郎どん!わしらじゃ~およびに参上!遠野のかっぱ族、参上!」
「太郎どん、太郎どん!わしらも、参上!筑前若松のかっぱ族、ただいま参上!」
「わしらも、参上!島根の日野川のかっぱ族、ただいま参上!」
「わしらも、参上!五島列島の河童族(ガータロー)、ただいま参上!」
数十隻の和船がぞくぞくと相模川河口に乗りいれてきた。どの船からも「ワァー」という歓声があがり、ある船はふなべりをたたき、拍子木に似た(かっぱ拍子木)を打ち鳴らし、また竹で作った横笛(かっぱ笛)を鳴らし、にぎやかに入って来た。
各船には色とりどりの長いのぼり旗が風にまい、美しくもあり、楽しげであった。
太郎河童は大いに驚き、涙をながして歓迎した。先頭の和船に乗り移り、河童族と抱き合い、かっぱ語で挨拶を交わした。
「よう、来ていただいた、本当によう来てくだされた!」
「この相模の国にようこそ、こられた!」
「ありがとうござる、ありがとうござる」
つぎつぎと船を乗り移り、各河童族と涙を流し、抱き合った。そうして、ひととおりの挨拶が終わると、先頭の船に戻り、声をはりあげた。
「ご案内つかまつる!」
「あとにつづかれよ! 
「いざ、いざ、まいらん、相模の河童さくらの宴へ」


(終わり)



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相模の河童まつり

相模の国の相模川にたった,一ぴきで住む、太郎河童。仲間が欲しくなり、大山の天狗様にお願いをしました。願いがかなって、天狗様のお使いのワシ殿が各地の河童に「太郎河童のひょうたんに入れた檄文」を届けてもらいました。
やがて、春はさくらの咲く頃、各地から河童族がかっぱ船に乗って、相模川にぞくぞくと集まってきました。
「太郎どん、太郎どん!わしらじゃ~およびに参上、遠野のかっぱ族、参上!」
「太郎どん、太郎どん!わしらも、参上!筑前若松のかっぱ族、ただいま参上!」
「わしらも、参上!島根の日野川のかっぱ族、ただいま参上!」
「わしらも、参上!五島列島の河童族(ガータロー)、ただいま参上!」
数十隻の和船がぞくぞくと相模川河口に乗りいれてきた。どの船からも「ワァー」という歓声があがり、ある船はふなべりをたたき、拍子木に似た(かっぱ拍子木)を打ち鳴らし、また竹で作った横笛(かっぱ笛)を鳴らし、太鼓(かっぱ太鼓)を打ち、にぎやかに入って来た。
各船には色とりどりの長いのぼり旗が風にまい、美しくもあり、楽しげであった。
太郎河童は大いに驚き、涙をながして歓迎した。先頭のかっぱ船に乗り移り、河童族と抱き合い、かっぱ語で挨拶を交わした。
「よう、来ていただいた、本当によう来てくだされた!」
「この相模の国に、ようこそ、こられた!」
「ありがとうござる、ありがとうござる」
つぎつぎとかっぱ船を乗り移り、各河童族と涙を流し、抱き合った。
そうして、ひととおりの挨拶が終わると、先頭のかっぱ船に戻り、声をはりあげた。
「ご案内、つかまつる!」
「この太郎河童の、あとにつづかれよ! 」
「いざ、いざ、まいらん、相模の河童さくらの宴へ」
かっぱ船の船団は隊列をつくり、上流へ、上流へこぎ進む。
時は春。両岸のさくらの花が満開。大山に日が沈み始め、夕映えの中を進む。
さくらの並木に沿って、ぼんぼりが薄い灯りをともし、美しくさくらの花が映え、かっぱ船のかっぱ族もただ見とれていた。
やがて、相模川、中津川、小鮎川の三の合流地点に到着。両岸は見事なさくらの競演であった、そこが相模の太郎河童の住むところである。
「さぁ~おりられよ!方がた。この地が、わしの住む、かっぱ名で三流じぁ」
「わぁ~何と美しい国じゃこと!」
「悠々たる霊峰大山、そして清い流れの三流、それにつづくかっぱの大地,良きかな、良きかなぁ!」
太郎河童 「ここから見えるのが、かっぱ田。おいしいお米が沢山とれまする。」
「そして、かっぱ畑。ダイコンをはじめ、いろんな野菜がとれまする」
「そして、三つの川、鮎をはじめ、沢山の魚がとれまする」
大きな中州に、たくさんの席がもうけられており、各席にはダイコン漬け、胡瓜漬け、ナス漬けをはじめめ、沢山の漬物が積み上げられており、さらに鮎をはじめ、沢山の魚がところせましとおかれている。
また沢山のお酒が入った樽が置かれていた。
「お酒は地酒のかっぱ酒!」
「米から作った(米酒)、ぶどうから作った(ぶどう酒)、なしから作った(なし酒)、いもから作った(いも酒)、みかんから作った(みかん酒)」
「さぁ~さぁ~かっぱ酒。さかずきになみなみ満たして、杯をあげましょう!」
「ご一同!ご唱和をおねがいつかまつる!」
「かん、かっぱ!かん、かっぱ!」
「お~お~お~」
いよ、いよ、太郎河童の待ちに待った瞬間である。
たくさんのかっぱが声高らかに、杯をあげた。
相模の国、太郎河童の里、三流。人間界と接しているが、人間には見えないかっぱ族のまつりの始まりである。


(終わり)



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相模の河童まつり宴たけなわ
相模の国に大河相模川が流れています。相模川、中津川、小鮎川の三つの川が合流する地点に、相模のかっぱ村が「三流」があります。人間界には見えない、まぼろしのかっぱ村です。
春はさくらの咲く頃、各地から河童族がかっぱ船に乗って、相模川にぞくぞくと集まってきました。
両岸は見事なさくらの競演であった、そこが相模の太郎河童の住むところ「さんりゅう」である。
「さぁ~おりられよ!方がた。この地が、わしの住む、かっぱ名で三流じぁ」
「わぁ~何と美しい国じゃこと!」
「悠々たる霊峰大山、そして清い流れの三流、それにつづくかっぱの大地,良きかな、良きかなぁ!」
太郎河童「ここから見えるのが、かっぱ田。おいしいお米が沢山とれまする。」
「そして、かっぱ畑。ダイコンをはじめ、いろんな野菜がとれまする」
「そして、三つの川、鮎をはじめ、沢山の魚がとれまする」
大きな中州に、たくさんの席がもうけられており、各席にはダイコン漬け、胡瓜漬け、ナス漬けをはじめめ、沢山の漬物が積み上げられており、さらに鮎をはじめ、沢山の魚がところせましとおかれている。
また沢山のお酒が入った樽が置かれていた。
「お酒は地酒のかっぱ酒!」
「米から作った(米酒)、ぶどうから作った(ぶどう酒)、なしから作った(なし酒)、いもから作った(いも酒)、みかんから作った(みかん酒)」
「さぁ~さぁ~かっぱ酒。さかずきになみなみ満たして、杯をあげましょう!」
「ご一同!ご唱和をおねがいつかまつる!」
「かん、かっぱ! かん、かっぱ!」
「おぅ~お~お~お!」
いよ、いよ、太郎河童の待ちに待った瞬間である。
おおぜいのかっぱが一同に集まり、楽しく語らい、飲み、歌い、踊り、河童族の繁栄を謳歌する、かっぱ祭りである。太郎河童はこの「さんりゅう」でできる事を感激し、心から「大山の天狗様」に感謝した。
「さて、さて、ご一同、相模のかっぱ田でとれた、おいしいモチゴメでもちつきをいたしまする。お手伝いくだされ~」
「よう~し~おれがつく」
「おれも、やるぞ!」 「わたしも手伝うわ~」
多くのかっぱ衆がうすのまわりに集まる。
蒸したモチゴメがうすの中に入れられ、力自慢が杵でつく。
「えい!ペタンコ、えい!ペタンコ、えい!ペタンコ 」
掛け声がかかり、気合がはいる。つぎつぎと餅はできあがり、女衆がもちを、ちぎり、丸める。
相模のかっぱ餅のできあがり。畑の大豆から作った醤油をからめた「醤油もち」「ダイコンもち」「なっとうもち」「きなこもち」「あんころもち」
いろんな「もち」のできあがり。 
おいしい「もち」もふるまわれて、相模の国のかっぱ村「さんりゅう」のかっぱまつりさくらの宴も、宴たけなわであります。


(終わり)



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相模の河童村 三流
各地から集まった河童族のお祭り、「 相模のかっぱ祭り 」は三日三晩つづいた。宴もやっと終わりに近づいた。
遠野のかっぱ族、筑前若松のかっぱ族、島根の日野川のかっぱ族、五島列島の河童族(ガータロー)、の中から、この相模の「さんりゅう」に残りたいと、数十家族が名乗りでた。太郎河童は心から喜んだ。
「ええ、本当!夢見ているようだ!」 「各河童族の皆様衆、!よろしいかぁ~」
各河童族とも「おのおのの河童が残りたいという名ならば、自由だ」
「太郎河童どんにおまかせいたそう」 「太郎どん、残ったかっぱ族まとめて、どうか、よい村をおつくりなさい」
「ありがとうございます! ありがとうございます! 」
太郎河童は何度も、何度も、こうべを下げた。
さくらの宴も終了した。
翌朝 、各河童族の旅だちのときを向かえた。笛がながれ、旅だちの太鼓がどこかもの悲しそうにながれ、各船団に帆が張られ、一そう、また一そう帰途についた。
三流に残った村河童が見送る。
河童族の挨拶である、「 両手をあげ、大きく左右にゆつくり振る」
つぎ、つぎ、とかっぱ船は相模の国の相模川、「 かっぱの村、三流 」を出こうしていった。
いつまでも、いつまでも、三流の住河童は手を振りつづけた。

かっぱ村の村づくりが始まった。
太郎河童が村長に選ばれた.百かっぱをこえるかっぱ数になった。村の取り決めごとが話しあわれ、村のかっぱ村の掟(おきて)が作られた。
「我々、河童族は子々孫々に渡るまで生き残り,繁栄しなければならない。」
「人間界と和し共に共栄共存をしなければならない。」
「河童族の団結をはかり、お互いに助け合い、仲良く、河童族の誇りをもって生きること」
「 物は分けあい、奪いあわないこと」
また各かっぱの役割が決められた。
魚の漁にいくかっぱは,川魚班、海魚班に分かれ担当が決められた。野菜づくり、米づくり、お酒づくり、大工,お天気予報、踊り、宴会、それぞれの担当が決まり・活躍が始まった。
相模の太郎河童の永年の夢が、実現した。
相模のかっぱ村「三流」、人間界には見えない、かっぱ村である。


(終わり)



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河童の名工 甚五郎

相模のかっぱ村「三流」、人間界には見えない、かっぱ村が相模の国、相模川、中津川、小鮎川の三つの合わさる所に、かっぱ村「三流」、悠々とした霊峰大山のふもと,肥沃(ひよく)な大地、三つの川の清流にあります。人間界には見えない、まぼろしの別天地です。
かっぱ村には名人、上手、といわれる、かっぱが住んでいます。なかでも、「天狗様の木彫り」「かっぱの木彫り」にかけては名人といわれている、名工がおります。
その名は「甚五郎(じんごろう)」
「鮎の木彫り」「鯉の木彫り」「たぬきの木彫り」などは、すばらしいものがあります。
名工 甚五郎は天気の良い日は、三つの川のそばで木彫りに使える木を探しにいきます。
クス、ホウ、ベニ松、ヒノキ、サクラを求めて今日も朝早くから、かっぱ舟をあやつり、相模川の上流に上がっていました。
甚五郎(じんごろう)は人に化けるときは、いつも年寄りのきこりに化けます。一本のヒノキに目がとまりました。
「ほう~これはよい木だ、おれをよんでいる」
「おれに彫ってくれ、彫ってくれ、まねいている」
「さて、この木は、おれ一人では手にあまる。むりだ」
「どうするか~どうするか~」
「そうだ、村人に頼もう」
甚五郎は三田村の農家を訪ねた。
「となり村のきこりじゃが、木を一本切るのを手伝うてほしい」
「どこの木じゃ?」
「あそこの、川ぞいの山のヒノキじゃ」
どれ、どれといいながら、家の外に出た。
「あんれ~、あれは、じっちゃまの山だ」
「じっちゃまに聞いてみないとなぁ~」
「じっちゃま!じっちゃま!お客さまじゃぁ~」
じっちゃまが杖をついて、戸口に出てきた。
「なんじゃぁ?」
「じっちゃま、この白ひげのおとしよりが川ぞいのヒノキを欲しいといっていなさる」
「おれに木を切るのを手伝ってくれとなぁ」
じっちゃまはうさんくさそうに、白ひげをみつめた。
「売ってやらんこともないが、あのヒノキは上等でなぁ、ちっと値がはるぞ~」
「え、ヒノキは売り物なのか?」
「おまえ様~あのヒノキをただで、切ろうとしているのかい?」
「金は持っていない」
「え~え~驚いた」
「どこの人だぃ~」
「あんまり見かけないお人だが・・・」
「あのヒノキがおれをよんでいるのじゃ」
「切ってくれ!切ってくれ!彫りあげて、魂をふきこんでくれ!」と叫んでいるのじゃ。
「わぁぁ おったまげた!」
「木の声が聞こえるのか?」
「ああ、聞こえる」
「そうか、たいしたお人じゃ」
「名はなんともうす?」
「木彫り士 甚五郎 」
「はて? どこかで、聞いたお名じゃ」
 じっちゃまも村人も顔を見合わせて、困った表情をした。
「甚五郎さん、このヒノキも丹精こめて育てあげた木じゃ。ただでは譲れない」
「そうか・・・」
すると甚五郎は腰につけた、袋から「真珠玉」をとりだした。
「どうじゃ、この真珠玉でどうじゃ!」
「わぁ!何とすばらしい真珠玉じゃ!」
「この袋の中に沢山入っている、袋ごとあげる」
「これで売ってくれ~」
「わぁ~こんないっぱい、驚いた」
「解った!売ろう。そして木の切だしも手伝う」
こうして村人とかっぱの甚五郎のヒノキ売買が成立した。
そして木は無事切りたおされた。相模川に浮かんだ。

「甚五郎どん、このヒノキを彫りあげたら、一体、村にくれないか」
「大事にするから覚えていてほしい」
「あい解った、世話になりもうした。それではさらばでござる」
かっぱの甚五郎は大きなヒノキの丸太の上に乗り、かっぱの里「三流」に帰っていった。





(終わり)



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名工甚五郎とかっぱ堂
   

相模のかっぱ村「三流」の名工 甚五郎、相模川の上流で村人から「真珠玉 」と交換してきたヒノキの名木、じっと見つめ、あれこれ思案していた。
「この木は何になりたいのか?このおれに何を彫って欲しいのか?」 
名工 甚五郎は目をつぶり、雑念(ざつねん)をはらった。
「ふぅ~っ」と心に浮かんだ。「そうだ、かっぱ村の村長、太郎河童を彫ろう」 「この村に招いてくれた、太郎河童を彫りあげよう。よし決めた!」
甚五郎は一挙に荒彫りから入り、太郎河童の全体像を彫りあげた。その彫りあげる速さ、力強よさ、正確さ、「一木造り」さすが名人芸である。
甚五郎のかっぱ小屋で、一心ふらんに彫りつづける。何日も何日も、彫り続ける。寝食を忘れ、ただ、ただ、彫りつづける。
「やっと、できた。どうにか気にいったものができた。ありがたい、木に魂(たましい)がやどった」
そっと甚五郎は木彫りの河童を立ちあげる。そして、じっとながめ、相模川の聖水を桶にくみ、出来上がったかっぱの頭から水を流し喜びの呪文(じゅもん)を唱える。「相模川の聖水よ、願わくば力を与えたまえ!喜びと、平安、慈悲の木像となりえんことを、カッパ、カッパ!」
そして出来上がった木像をもって、「三流(さんりゅう)」の村長の太郎河童の家に見せに行った。
「村長、村長! 甚五郎じゃ~」と大きな声で村長の太郎河童に呼びかけた。
「お~おぃ~どなた様じゃ?」
「わしじゃ~ 甚五郎じゃ」
「お、おぅ、あぁ~何と大きな、立派な河童像だこと!」
「村長! おぬしの像を彫った」
「え、え~わしの像とな・・・」
村長はまじまじと、かっぱの像をみっめた。
「何と、生きているようじゃ。これがわしか…。魂が感じられる」
そこえ噂を聞いて、村の衆が集まって来た。
「何と!本当に生きているようじゃ・・」
「村長にうり二つじゃ」
「何と立派だこと!」
村長の太郎河童が自分に言い聞かせるように口を開いた。
「この家に飾るには、あまりにもったいない。こんな「魂」のはいった立派なかっぱ像、どうしようか?そうだ、堂を建て、そこに安置しょう」
そこで、皆の衆に話かけた。
「皆の衆、この立派なかっぱの木像を安置する堂を建てたいと思うがどうだろう」
大工の足助「いいね~いいね~やろうじゃんか」
川漁の担当 い吉「皆で力を合わせ、ぱっと、やろうじゃんか」
海漁の担当 う吉「めでたい、めでたい、やろう!」
織物の担当 き絵「いいお話、ぜひ仲間に入れてくだしゃんせ」
という訳で、かっぱ村の衆、皆で堂を作ることになりました。
そこでどこに堂を建てるか、太郎村長は考えた。
 ふと、甚五郎の話を思いだした。木の切出しに力を貸してくれた、人間界の村人の話が頭に浮かんだ。村人も甚五郎の木彫りを一体欲しいといっていた。
「そうだ。河童界と人間界の境にかっぱ堂を建てよう」
「わが河童族と人間界の融和ができる場所としょう」
早速、太郎村長は村の衆に集まってもらい、その話をした。
村の衆は皆、賛成をした。
そしてかっぱ堂の建築が始まった。村の衆、総でのにぎやかな作業である。皆、生き生きと働いた。
甚五郎はさらに、堂の欄間(らんま)にかける木彫りの彫りに熱中した。数ヵ月後、堂は完成した。
村の衆総で完成を祝わった。それは、それは、見事なお堂である。そして中央に安置された「太郎河童の像」はまるで生きているようなすばらしい像である。欄間に飾られた彫りものに皆の目が向けられた。
「ほぉ~ 鮎が滝を登っている、いま跳ねているようだ」
「かっぱもすばらしいが、この滝上りの鮎も見事、見事!」
甚五郎は皆の衆の賞賛(しょうさん)の中にいたが、ただ、木彫りをじっと見つめるのみであった。
人間界と河童界の境界に建つかっぱ堂、人間界からは見えないまぼろしの堂であった。ただ、人間でも、約束を守り、正直者、心やさしき者、善人には、見える境界のかっぱ堂である。





(終わり)



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太郎河童と小童(こわっぱ)
 

相模の国の河童村、「三流」の村長 太郎河童は毎日村を見回るのを日課としていた。
三流の一つ、中津川を見回った時の事であった。一人のこわっぱが魚釣りをしていた。その日は上流でかなりの雨が降り、水かさもじょじょに増し始め、流れも急に早くなりはじめていた。
「今日はあまり釣れないなぁ、雨も降ってきたことだし、そろそろ帰ろうかなぁ~」
その時である。
急にあたりがあり、竿が弓なりになった。強い引きがあり腰を落として、足をふんばった。しかし足がすべり、身体ごと川に「ドボン」と落ちてしまった。流された。
「あっ! 危ない!助けないと!」
太郎河童は急いで、流れの速い川の本流に潜って「こわっぱ」に近づいた。
こわっぱは水中でもがいていた。太郎河童は身体を抱き水中から引きあげた。他のかっぱも手伝い、河童村「三流」の岸に引き上げた。こわっぱの意識はなかった。
「さぁ~水をはかせよう!」皆、手伝ってくれ。
「心の臓が止まっている!河童族の秘伝(ひでん)の特効薬を使おう!」
かっぱ村の名医の赤ひげがこわっぱの口を開け、特効薬を流しこんだ。
「これでいい~もうすぐ意識をとり戻すじゃろう」
こわっぱを太郎河童の家に運ぶ。
しばらくするとこわっぱが意識をとり戻し、目を開いた。
「ここはどこじゃ~」
「何故、おれはここにいるのじゃ」
「おぬし達はだれじゃ?」
「見慣れない顔じゃが?」
村長の太郎河童が語りかける。
「おぬしはこの上の中津川で釣りをしていて、足を滑らせ川に落ち、意識をうしなった」
「覚えていないか・・・」
「そぅ、いわれれば、確かに釣りをしていた・・」
こわっぱは少しづつ思い出してきた。
「そうだ!すべって川に落ちた。あとは、覚えていない・・・」
こわっぱはもう、特効薬の効能出、起き上がることができた。
「どこか痛いところはないか?」
「うん、うん~どこもない・・」
「ところで、わっぱ~おぬしの名は何という?」
「どこの村の者じゃ?」
「いくつ、じゃ?」
こわっぱが答えた。
「おれの名はうし松、三田村の者じゃ。歳は九才じゃ」
「とと、かかはいるのか?」
「ととはおれが三才のときはやり病でなくなった」
「かかはいま、心の臓が悪く働けない」
「おれと兄貴、妹が働いて、めしをくっている」
太郎河童が尋ねた。
「おまえの仕事は何だ?」
「おれは朝早く起き、まず川釣りで魚を釣り、町にもっていって売る、そのあとしじみを売って歩く」
「兄貴は八百屋の手伝い、野良の手伝い、重い荷物運び、いろんな仕事をしている」
「兄貴はいくつじゃ?」
「十八じゃ」
「妹はいくつじゃ?」
「六才と四才じゃ」
「そうか・・苦労じゃなぁ・・」
「魚釣りをしていて、川におちたのじゃなぁ・・・」
「まだ、幼いのになぁ・・・」
うし松はもとの元気を取り戻した。
「うし松、元気をとり戻したようじゃなぁ~よかった」
太郎河童が大きい白い透きとった球をとりだした。
「これは、どこでも見とうせる球じゃ」
「おまえの家を見てみょう」
「あれ、幼い妹が泣いている、腹をすかしているようじゃ」
「かかが、あやしているが幼い妹は,泣き止まないようじゃ」
「あぁ~食べるものがないようじゃなぁ・・・」
うし松はじっと透し球をみっめていた。
「ここは、河童村、「三流」わしが村長の太郎かっぱじゃ」
「わしがおまえを助けた、これも何かの縁じゃろう」
「うし松、おまえは正直者で、働き者、親、兄弟おもい、兄弟そろって善人じゃ」
「おまえ達、兄弟にかっぱ村「三流」の特別通行証を与えょう」
「かっぱ村には自由に入りことができる」
「かっぱ村で出来た、野菜、漬物、海の魚類、川の魚類、物産の販売を許そう」
「但し、一つだけ、条件がある、われわれ河童族には作りだすことが出来ない、甘味の原料「砂糖」を交換で運んで欲しい」
「どうじゃ、うし松、やるか?」
「ほんとうに、かっぱ村の品じなをあつかえるのか?」
「そうだ、おまえ達兄弟にまかせる」
うし松は少し考えて、大きな声で答えた。
「やります!やらしてください!こんないい話はない!」
「兄貴もぜひと、いうとおもいます」
「そうか、よかった」
「それでは、かっぱ村「三流」の入村の証、真珠の腕輪をさずける」
「そして、おみやげに米、もち、野菜 漬物、魚、たくさんもっていけ」
「ありがとうでござる、夢を見ているようじゃ!」

この日境に、人間界と河童村「三流」との交易がはじまった。





(終わり)



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かっぱ村三流のお土産
相模の国の河童村「 三流 」人間界からは見えない幻のかっぱ村。そこへ出入りが許された、うし松、うま松兄弟、河童族と人間族との交易が始まった。
うし松、うま松兄弟がお日様が上がると同時にかっぱ村「三流」に向かう。
大きな荷車を引きながら、じゃり道をいきおいよく進む。人間界と河童界分ける境界に来て、かっぱ界に入る「三流」の入り口で通行手形の真珠の腕輪をかざす。すると見た事ないかっぱ界の三流村の風景が目に入ってくる。
うま松「何と~こんなところにかっぱの国があるとは。何と~広い、田園風景だこと・・・、何と~おおぜいの河童がいること・・・」
うし松「さぁ~太郎村長の所へいこう」
太郎村長の家の前にはすでに、村長がでできて、二人を出迎えに立っていた。
うま松、うし松が深ぶかと頭を下げる。
「よう、きた、よう、きた、待っていたぞ」
「先日は弟が危ないところを助けてもらい、ありがとうごぜいました」
「また、沢山のいただき物をし、本当にありがとうごぜいました」
「おかあ、からも、くれぐれ宜しくとのことです」
「そうか、そうか、うし松、どうじゃ、もう身体はよいか」
「へい、もうすっかり、よくなった」
「それは、よかった。」
荷台の上から、砂糖の袋を下ろす。
「さぁ~村長様、少ないが、砂糖です」
「受け取ってくだされ」
「これは、貴重な物を、かっぱ族にとっては大変貴重な物じゃ。ありがたくもらいますぞ」
「ところで、うま松うし松、商いをする場所じゃが~」
「いい場所があるか?」
「へい、厚木宿の、人どうりの多い場所の、地べたに並べて売ろうとおもいます」
「そうか、路上でするのか・・・」
「雨の日は困るのではないか?」
「屋根のない所では、品物が傷むのじゃないか?」
太郎村長は、川漁の担当い吉を呼び、いいつけた。
「川の中の保管庫から、真珠球を桶にいれもって来てくれ。それに、かっぱ村の名医 赤ひげを呼んできてくれ」
「お安い、ご用!がってんだ」
やがて名医の赤ひげがやって来た。
「村長、お呼びですか」
「赤ひげ先生、うま松、うし松のかか様が、心の臓の病で床について、いるそうじゃ。先生、河童族の特効薬をせんじてやってくだされ」
「ところで、うま松、うし松、かか殿の病だが、どんな具合じゃ?詳しく、聞かせてくれ」
赤ひげ名医がうま松、うし松の話を聞いて、診断をした。
「ほう、そうか、解った、まかせくれ」
赤ひげ先生は特効薬づくりのため、診療所へ戻った。
入れ替わりに、い吉が桶一ぱいの真珠球を持ってきた。
「村長、真珠球を持ってきた、どうするのか?」
太郎村長が真珠を入れた桶を受け取った。
「うま松、うし松これをおぬし達にあげる。この真珠球を売って、お金にして、お店を買え。路上の商いでは、いろいろ面倒がおきる」
ニ人の兄弟は顔を見合わせ、驚いて、村長を見つめた。
「本当にこんなに沢山の真珠球をいただいていいのか」
「びっくりだ!」
「よい、よい、末長く、おぬし達とかっぱ村「三流」との交易のためじゃ。えんりょ、するな、取っておけ」
「何と、店が持てるのか、夢を見ているようじゃ」
そこへ、名医の赤ひげが特効薬を持って現れた。
「この特効薬は心の臓にきく、かっぱ界の薬じゃ、持っていって、かか様に飲ませろ」
「すぐに、きくはずじゃ」
「ええ~、なにからなにまで、ありがたや、ありがたや」
うま松、うし松は手をとり合い、涙を流し喜んだ。
沢山の野菜、漬物、川魚、海魚、を荷台に積んで、かっぱ界を後にした。





(終わり)



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厚木宿のかっぱ屋
    

相模の国に相模川、中津川、小鮎川の三つの川が集まる所に河童村「三流(さんりゅう)」がある。
村長は太郎かっぱで、多くの村の衆が住んでいる。
三流は人間界から見えない、まぼろしのかっぱ村です。
足をすべらせ、川で溺れていた、村人のうし松を助け、これをきっかけに、兄のうま松の兄弟に、かっぱ村に自由に通行する、手形を渡した。そして、かっぱ村の野菜、漬物、川魚、海魚類の物産の交易を認めた。そして、厚木宿に店舗を出すために真珠球を渡し、店舗をかまえるお金に変えるように言い聞かせた。兄弟は早速、真珠球を小判に代え厚木宿のお店を探し始めた。
「兄ちゃん、夢みたいだ。河童村「三流」の村長太郎かっぱからいただいた、真珠球がこんなに沢山の小判と代えられ、お店を買う代金になるとは」
「うし松、この事はだれにも話してはならないぞ。海で集めたという事にして、かっぱ村の話はしてはならないぞ」
「それにしても、赤ひげ先生にいただいた、特効薬があんなに早くきくとは、ありがたや、ありがたや!」
「かかも元どおりに元気になり、皆、喜んでいる」
「うし松、かっぱ村の皆の衆のご恩は忘れてはならないぞ」
「うん、うん。けして忘れない。かっぱ村のためになるように、がんばるよ!」
「そうだ、そのいきだ」
口入れ屋の斡旋により、厚木宿の一角に店舗を購入できることとなり、いよいよ、開店の運びになった。
店の名前は「かっぱ屋」扱う品は、野菜を中心に漬物、である。八百屋である。
新鮮で、値段も安く、開店いらい評判となり、連日売り切れで、押すな、押すなの人気店となった。
並んでいる、お客様からいろんな声が上がる。
「かっぱ屋さん、いつも品切れでは、もったいない、もっと店頭に並べてくれ」
「こんな、立派な野菜、漬物、どこで取れるのだい?」
「もっと、作ればいいじゃないか」
「毎日でもくるよ、品切れだけはかんべんしてよ」
お客さまの評判はますます上がってゆくのだった。

「太郎村長と相談をして、この付近の農家にも,栽培方法を伝授してもらい、相模の名品にしよう」
「それは、いい考えだね!」

今日も相模の国、厚木宿の「かっぱ屋」には多くのお客が押しかけている。




(終わり)



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かっぱのなみだ
むかし昔、相模の国の厚木村を流れる、相模川にいたずら者のカッパが住んでいました。
名前は太郎カッパと言い、相模川にかかる、もぐり橋の近くを寝ぐらにして、橋を渡る村人にいたずらをして、ひまをもてあましていました。
ある日のことです。夕暮れがちかずき、あたりが暗くなり始めたころ。
厚木村のほうから、にぎやかなかねや太鼓、笛の音と村人の楽しそうな声が聞こえてきました。太郎カッパは川岸にちかずき、土手の上からにぎやかそうな、広場のほうを見ました。淡い色のきれいなぼんぼりが灯り、高い舞台が設けられていました。その周りを村人が楽しそうに踊っていました。またたくさんの露店が立っていて、おいしそうな臭いが太郎カッパの所まで、とどいてきました。
「 あぁ おれも村人と同じように、踊ったり、飲んだり、食べたりして楽しみたいなぁ」
「ああぁ・・ だめか・・・カッパでは相手にされない・・」
「 おれ人間になれたら、いいのになぁ・・・」
「 なぜ、おれは、カッパなんだ」
「神様はふこうへいだなぁ~」
「それに、おれ今 一ぴき」
「 さびしいなぁ・・・」
「いいな~人は」
太郎カッパはとぼとぼと、ねぐらもあるもぐり橋のほうにもどって行きました。
もぐり橋に座り、聞こえてくる、祭りの楽しそうな音色を聞いていました。
「 ああぁ~なんでカッパなんだ」
「人になりたいなぁ~」
「自由に好きなところえ、好きな時間いける、人間がうらやましい」
太郎カッパは橋のふちに座り、足をばたばた、してくやしがっていました。
するとその時です、年老いた白ひげの人がこっこっとつえをついて、橋を渡ってきました。
背中をむけている太郎カッパのところで立ち止まりました。
太郎カッパは振り返りません。
じっとしていると、優しい声で
「 これこれ、そこのカッパ、そこで何をしておる」
「ずいぶんとさびしそうじゃな」
「 どうしたのじゃ・・・」
「ほっといてくれ」
「そうか・・」
「それじゃ、行くとするか」
太郎カッパが振りかえった。
じぃっと、その老人を見つめた。太郎カッパが口を開いて。
「おぬしは見かけぬ顔じゃな」
「どこの村の者か?」「どこから来たのか」
すると、白ひげの老人は手の平を高くあげ、一本の指を天高く指した。
「あそこ、からじゃ」
太郎カッパは天を見上げて、
「おぬしは空から来たのか?」
「空のどこからだ?」
老人は笑いながら、答えた。
「わぁ ははは。天からよ」
「 え~天から来たのか?」
「どうやって・・・」
「 雲に乗ってじゃ」
「え~え、え。本当か~」
「おぬしは仙人(せんにん)様か」
「そうじゃよ」
「ヒゲ仙人じゃ」
「そうか、そうか、それじや、俺の願い、聞きとどけてくれますか」
「何じゃ。話してみょ」
「俺は孤児。いつも、一人で寂しい」
「何も楽しいことは無い」
「いつそのこと、人間になって、自由にあっちこっちいって、気ままにくらしたい」
「村の人みたいに、祭りにいって踊ったり、おいしい物を食べたり、いろんな所、見て歩きたい」
「人間になりたい!」 「人にして下さい!」
「かっぱは寂しすぎる・・・」
じっと、白ひげ仙人はかっぱの話を聞いていた。
「そうか、そんなにかっぱがいやか」
「そんなに人になりたいか・・」
「なりたい、人間になりたい!」
「どうか、人間にして下さい」
白ひげ仙人は目を閉じて、ふっと~考えた。
「さて、どうしょうか・・このかっぱの願い聞き届けてもよいが・・・」
「このかっぱのために、はたしてなるかな~ぁ・・」
白ひげ仙人は目を開け、かっぱを見つめた。
「そうか、それほど言うならば、お前の願い聞き届けてもよいが」
「え~え、本当ですか!」「やった、やったぞ」
「とうとう、俺は人間になれる、なんと幸せなんだ!」
白ひげ仙人は静かに太郎カッパに語りかけた。
「よいか、かっぱ、よく聞け。明日の朝、このもぐり橋に最初に朝日があたる時刻にこの場所にきょ。その時まで、お前の考えが変わなければ、おまえの望みをかなえてあげる」
「明日まで、じっくり考えよ。さらばじゃ」
すると、突然、白ひげ仙人の姿は消えた。
太郎カッパは喜びのあまり、もぐり橋の上に両手を伸ばし、大の字に寝て天に向かい、大声出した。
「とうとう、やった!俺の長年の夢がかなう」
「運が向いてきた。明日だ、明日だ」
「人間になれるんだ」
翌日、朝日が昇る前から、もぐり橋で白ひげ仙人を待った。あたりがだんだん明るくなってきた。朝一番のまぶしい光が指して、太郎カッパの顔を照らした。その時である、突然、ぱぁ~つと白ひげ仙人が現れた。
「太郎かっぱ、どうじゃ、考えは変わらないか」 「人間になりたいか」
白ひげ仙人は静かに語りかけた。
「はい、どうしても、人間になりたい。考えは変わりません」
「そうか、それでは太郎カッパ、お前を人間にしてあげよう。」
「わぁ、あ、本当ですね!わぁはは、は、うれしい、うれしい」
「今すぐなれるのですね」
「そうせくな」
「太郎かっぱ、よく聞け」
「一つだけ、条件がある」
「え、条件ですって?」
「条件って、何です
「それはなぁ・・」
「なみだじゃ」
「え、なみだですか?」
「そうじゃ、なみだじゃ。悲しいときに、泣く、なみだじゃ・・・」
「うれしいとき、かんげきしたとき、喜びのときに流す、はみだはよいが、苦しいとき、悲しいときに流すなみだじゃ」
「え、苦しいとき悲しいときの流すなみだですか?」
「そうじゃ、苦しいとき悲しいときに泣くまえぞ」
「え~泣くとどうなりますか?」
「元のかっぱにもどるぞ」「それでも、よいか」
人間になりたい太郎カッパはすぐに、答えた。
「苦しいこと、悲しいことに会わなければいいんだ」
「はい、泣きません。楽しいバラ色の毎日を送ります」
「心配ありません」
「さようか・・・」
「そのかくごであれば、望どうりに人間に変えよう」
白ひげ仙人が長いつえを振った。
白い煙が吹き出し、太郎かっぱの全身が包まれた。しばらくして白い煙が薄くなり、太郎かっぱの全身が見えてきた。
頭のお皿も、背中のこうらもなくなり、とがっていた口も平らになり、普通の男の人間に変身していた。
太郎かっぱは川面に自分の全身を映して見た。
「わ、わ~あぁ、人間になった! 人に生まれ変わった」
「やった、やった、人間さまじゃ」
「これで自由に、どこでもいかれる。うれしい、うれしい最高の一日じゃ」
太郎かっぱは、はしぎ回った。
じっと白ひげ仙人はそのようすを見ていた。
太郎かっぱが落ち着いたところで、声をかけた。
「太郎かっぱ。いや太郎。人間になった太郎よ」
「けして忘れるで、ないぞ。悲しい涙のことを」
「それでは、良き人生を送れ、さらばじゃ」
「仙人さま、ありがとうございます。ありがとうございます」
白ひげ仙人は音も無く消えた。
「わぁ~これからのことを考えると、わくわくする」
「さぁ、人間、人間、人間になるぞ」と叫びながら、太郎は、早速、村をめざして歩き始めた。
いつも、川から見てた一番近い村、厚木村に入った。
厚木村は小さな村であったが、家、家から朝げの煙らが上がり、生き生きとした村人の暮らしが感じられた。川から見ていた、割合、大きなかやぶき屋根の家に入った。軒先に回った。初じめて家の中をのぞいた。
「うぁ~人間の家って、こうなっていたのか・・すげぇ・・」
太郎はずっと立ち止まり、しげしげと家の中を見まして、ひとりで感心していた。この家は漁期には相模川で川魚をとる川漁師で、漁がないときは、田んぼ、畑をやる家であった。





(2へつづく)



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かっぱサンバ

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